アイドルマスターの小説を紹介します。

 彼がベッドのところに行き、「そう思う」といって中に入ると、ワイヤスプリングの一本がひっそりと曲を奏でた。
――レイブラッドベリ『社交ダンスが終った夜に』

 こんな地の文をさらさらと書ける日は来るのでしょうか。どうもサイトロです。
 タイトルの通り、自分が好きなアイドルマスターの小説を紹介していきます。作品は昨年末から最近までのものになります。pixivの小説と同人誌をそれぞれやります。タイトル一覧です。各タイトルがそのまま作品・通販ページへのリンクになります。

pixiv編

1. どうか正夢

2. 真壁オートマータ

3. 浅草タンペルデュ

4. 失われた図書を求めて

5. ウェディング・ワインディング

6. 羽根ペンの魔法、あるいは最後にはインクの染みに終わる物語

7. 夜陰に触れる

8. ハーフサイズ・スリーパーズ

9. 幻に告ぐ

10. 春歩く

同人誌編

1. 曇天に咲く

2. 揺籃期の終り

 

 ではではまいりましょう。以下は昨年投稿したオススメ小説集。こちらも是非。

sytlo.hatenablog.com

 

pixiv編

1. どうか正夢

【あらすじ】
「普通の人になります」
 アイドル・佐久間まゆの言葉だった。
 ゆっくりと、彼女は階段を降りていく。
 十二時を告げる鐘の音は、誰にも聞こえない。
【推薦コメント】
 プロデューサーと結ばれるということ。それを許されるか許されないかでは無く、叶うか叶わないかで描いた本作は、ただ佐久間まゆとプロデューサーのためだけにあったのだと思います。

2. 真壁オートマータ

【あらすじ】
「レッスン、付き合って下さい。はい。日常会話のレッスンです。」
 何気ない会話、電子メール、そしてポーカー。
 真壁瑞希とプロデューサーのレッスンが始まる。
【推薦コメント】
 二人の会話は奇妙なテンポで進みます。哲学の話や文字コードの話。分からないことを話す二人が心なしか楽しげに見えます。そして終盤のポーカーは、なるほどそうきたかと驚きの連続です。

3. 浅草タンペルデュ

【あらすじ】

『Sub:(*´v`*)ノ <プ

『ロデューサーさん、実は私、来週の日曜日はお休みなんです♪』

 そんなメールから、浅草を巡る物語は始まる。
 待ち合わせは二月十四日。北上麗花は彼岸からやって来る。
【推薦コメント】
 北上麗花さんがひたすら自由で、その中でプロデューサーは何とか隣に居ようと必死で、これが普段も続いていると思うと少しほほえましく、同じだけ大変そうだと思います……。このやりとりが何時かのお好み焼きに繋がるのでしょう。

4. 失われた図書を求めて

【あらすじ】
 その本の名前を知りたい。
 七尾百合子の願いは走り出す。
 高山紗代子を連れて、休日を巡る。
 全ては、失われた図書を求めて。
【推薦コメント】
 アイドルとしてステージに立つ姿と、休日を穏やかに過ごす姿。二つを重ね合わせることが出来るアイドルマスターというコンテンツが、僕はとても好きです。こと本作はその中にミステリを織り交ぜており、明かされた真実には思わず舌を巻いてしまいました。

5. ウェディング・ワインディング

【あらすじ】
「私には、なぜウェディングドレスの写真がないんでしょうっ!?
 そんな莉緒の不満に応えるかのように、仕事は舞い込んでくる。
 しかし本場を目の前に、莉緒の思いは曲がりくねる。
 それでも結婚式は始まる。教会の扉は開く。
 純白は、ステンドグラスの向こう側へ。
【推薦コメント】
  仮初めの結婚式を目前にして、酔い潰れたり悩みを吐露する莉緒。そしてそんな彼女を支える765プロの存在。結婚式という仕事を通して、莉緒と皆との絆が強く描かれていて、改めて765プロはいい場所だと思いました。そしてさりげない所で莉緒を持ち上げるプロデューサーはいい仕事をしていますね。思ったままを口にしているだけかもしれませんが。

6. 羽根ペンの魔法、あるいは最後にはインクの染みに終わる物語

【あらすじ】
 羽根ペンは、七尾百合子の誕生日に現われた。
 それは彼女の言葉をこれまでよりも雄弁に、そして鮮やかに描き出す。
 言葉を送る相手は、羽根ペンの贈り主。
 最後には、インクの染みに終わる物語。
【推薦コメント】
 タイトルの時点で最高でした。勿論その評価はタイトルに留まらず、物語全体にも言えることでした。七尾百合子への贈り物というストレートな物語で、彼女の趣味やプロデューサーへの気持ちが綿密に描かれていて、一層彼女のことが好きになること間違いなしです。

7. 夜陰に触れる

【あらすじ】
 夜の帳が落ちた遊園地。
 最上静香は、願いをつぶやいた。
 観覧車は静香を、そしてプロデューサーを空へと運ぶ。
 交わす言葉は、二人だけのものだ。
【推薦コメント】
 プロデューサーと静香の話、大好きなんです。更に静香の可愛げな願いと、プロデューサーへの言葉に身もだえました。冷たい夜風を吹き飛ばすような、甘いお話です。

8. ハーフサイズ・スリーパーズ

【あらすじ】
 佐竹美奈子横山奈緒
 二人が分かち合う場所、時間、そして温もり。
「おやすみなさい」までには、君たちの物語が詰まっている。
【推薦コメント】
 半分の場所で眠る二人の、距離を探る優しい時間。胸の内に本心を隠しても、分かち合える感情。明日にはまた、何時もの二人なのだと分かっていても、少し切なさを感じてしまいます。

9. 幻に告ぐ

【あらすじ】
 編集プロダクションで働く『僕』と、読者モデルの『佐久間まゆ』の物語。
 幻とは誰か。そして、誰が幻に告げるのか。
 佐久間まゆはまだ、アイドルではない。
【推薦コメント】
 アイドルになる前の佐久間まゆがどんな人間で、どんなことを話すのか。そういった時間が丁寧に描かれていることに惹かれました。
 そして『僕』という人間の過去、現在については、佐久間まゆ以上に描かれています。アイドル、そしてプロデューサーでなくとも、アイドルマスターの物語は存在していいと自分は思います。本作のような物語を読むと、尚のことその思いは強くなります。
 こんな道の果てに佐久間まゆが舞台に立つとしたら。ただ、どんなアイドルにも過去はあり、舞台に立つときは全てをひた隠しにするもので、時に私たちはそれに触れることはないのでしょう。時に、アイドルに触れる術を持たないということを忘れてはなりません。半ば余談。

10. 春歩く

【あらすじ】
 所恵美に誘われて、北沢志保は春の中を歩く。
『……例えば、ですけど』
 やがて彼女が語るのは、贈り物の話。
 何時か巡る誕生日の話。
【推薦コメント】
 恵美が志保を思って春へと誘い、志保もまた恵美を思っていることが、密やかに描かれている柔らかな時間。春、いいですね。素敵です。

 

せんでん

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 トライスタービジョンの小説同人誌、『輝く瞬間』をboothにてDL販売中。
 所恵美のアイドルとしての始まり、島原エレナとの共演、そして田中琴葉の葛藤をプロデューサーの目線から描いた一作です。アイドルマスターの要素、出会いや友情に葛藤、そしてなにより、ステージが小説として詰まっています。未読の方は是非。

 

同人誌編

1. 曇天に咲く

【あらすじ】

 夢破れた少女と、力及ばなかった男の、10年後のものがたり。
 最上静香はアイドルを辞め、仲間と別れ、日々を生きていた。
 今はまだ、空に曇天が広がるばかり。しかし僅かに光が差す。
【推薦コメント】

 最上静香の十年後ということで、誰しもが普段の姿ではありません。最上静香はどこか乾いていて、北沢志保は夢を叶え、そしてプロデューサーは燃え尽きている。誰しもが必死に生きて、その中で勝ち、負けても尚生きている。そんな思いが『曇天』というタイトルに現われているように思います。
 そして、ゆっくりと、『咲く』ために、咲こうと必死にもがく姿を描かれています。大人びて、乾いていても、最上静香という子の中で変わらないものはありました。そして、嘗て彼女を導いていた男の中にも。
 嘗ての終末を憂いながらも、再起する姿を描いた長編となっております。

immoraldream.booth.pm

2. 揺籃期の終り

【あらすじ】
 これは、アイドル青春小説の決定版。
 七尾百合子と北沢志保は舞台の主演を競い合い、
 高山紗代子はリーダーを果たすべく奮闘する。
 揺籃期の終り、三人はアイドルに青春を賭す。
【推薦コメント】
 アイドルマスターの小説同人誌で一冊推すならば、今は絶対にこの作品です。このコンテンツを象徴するアイドルという存在、レッスンという努力、様々なお仕事、そしてライブという最高の晴れ舞台。その全てが、一冊の本に収まっています。アイドル青春小説の決定版という銘に、何の偽りもありません。保証します。
 百合子は志保との競争に葛藤し、志保はまた別の苦悩を抱く。紗代子はメンバーを見つめ、そして、ライブを目指す。それぞれの戦いの果てに、最高の到達点があります。
 この一冊から、アイドルマスターの小説を初めてみませんか。

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  以上小説十二作品の紹介を終わります。どれも好きで、それを伝えたくて、もっと読んで欲しくてこの記事を書きました。アイドルマスターの小説が少しでも読まれるきっかけになってくれればと思います。
 こちらからは以上です。