『Theater Boost!』あらすじ妄想録

「さよならをいって別れた友だちが一人いたはずだぜ」と、彼はいった。
「彼のために豚箱に入っていたとしたら、それこそほんとうの友だちだったはずだ」
――レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』

 

仮面ライダーW』で『長いお別れ』を知ってからもうすぐ10年だそうです。どうもサイトロです。

 今回は『アイドルマスターミリオンライブ! シアターデイズ』での企画、『Theater boost!』にて提示された3つの演目、『超ビーチバレー』『三姉妹カフェ』『劇場サスペンス』についてシナリオのあらすじを書いて、その上でキャスティングを決めてみるという遊びを行ったので、その顛末を書いていきます。どうしてそれを始めたかでも長々しく書けるのですが私情でしかないのでインターネットには書きません。今から始めるのも私情でしかないのでは?!
 ともあれラインナップです。

1. 超ビーチバレー編

2. 三姉妹カフェ編

3. 劇場サスペンス編

4. おわりに

 ブログ書くのが一年ぶりなのでちゃんと出来るか心配ですが、やっていきましょう。

 

 

1. 超ビーチバレー編

1-1. はじめに

 まず出来そうだなと思ったのがこれでした。というのも漫画『ハイキュー!』(ちょうおもしろい)を最近読み返していたから取っつきやすかったのでしょう。クイーンとキングって呼ばれるだけの実力とは……とキャラ設定から練ってみたら俄然楽しくなってきたので、勢いそのままであらすじが出来てしまいました。なのでこれだけは設定から始まり、起承転結だけの内容となります。

1-2. キャラ設定

①新入生:ビーチバレーの名門校に入門してきた超新星
 武器は砂浜をもろともしない足早な動きと、ビーチバレーに対する情熱。先輩の厳しい指導にも笑顔で耐え抜き、勝利のためなら努力を惜しまない。
②先輩:新入生を厳しく指導する先輩!
 武器は精度の高いレシーブと作戦構築力と、それを実現するための圧倒的熱量。新入生を見て、キングを引きずり下ろすための策を思いつく。
③キング:ビーチバレー界に君臨し続ける絶対王者
 武器はあらゆる攻撃を読み切る直感ブロックと心理戦。あらゆる攻撃がキングの前では無意味と化す(それ故にクイーンは二番手足り得てしまう)。盾の王。新入生には興味アリ。
④右腕クイーン:勝利のためなら手段を選ばないキングの右腕!
 武器は超高速サーブとスパイク。矛の女王。しかしその真価は試合前の工作にある。多様な手段で精神的揺さぶりをかけて相手のここぞというプレーを塞ぎ、こちらのプレーを通す。全ては勝利のために。キングが新入生に向ける視線に激しく嫉妬。
⑤同級生:新入生と同学年の普通の子!
 武器はなし。凡才で凡庸、それ故にクイーンに承認されるべく新入生へと裏工作を計り続ける。しかし何一つとして気にしない彼女に、燃えたぎるほどに熱心な彼女へと徐々に惹かれていく。

1-3. あらすじ(起承転結)

起:新入生入学。入部初日からビーチバレー部に見学。自由に開放されたバレーコートで遊ぶ中、その動きの俊敏さ、砂浜に足を取られることなくボールを全速力で、笑顔で追いかける様に、何名かが気付く。
承:最初に声をかけてきたのは先輩。「あなたが血反吐を吐いてくれるなら、この部活で――ううん、ビーチバレーの一番にしてあげる」
 次に声をかけてきたのはキング。「君がこの部活で一番努力したならば、私の隣に来ることもあるかもね」
 最後に声をかけてきたのはクイーン。「あなたがキングの隣に来ることなんてない」
転:部活の歓迎試合と称された、新入生たちの淘汰。キングとクイーンが見守る中、ただ一つのチームが、他の全てをねじ伏せた。「2年と1年のチームなんてルール違反よ」「3年全員黙らせたんだからいいでしょ」「面白い」「早く試合、しましょう!」
結:王者に対峙する挑戦者。超速サーブは血反吐を吐いて克服した。最強のブロックはセットアップの読み合いで制した。しかしそれでも、王者は未だ王者であり、点差は縮まらない。「腕を痛めて、足を滑らせて……あなた、辛くはないの?」クイーンの声が唆す。「ここで負けても、誰もあなたを責めないわ」「いいえ、私が私を、許しません」新入生の情熱が、折れそうになる足をまた一歩先へと進める。そしてマッチポイント。サーブは先輩。「信じてるわ」「信じてますっ!」夕暮れの朱にボールが飛ぶ。鮮烈なクイーンのスパイクが宙に浮く。「決めなさい!」「決めさせるものか!」空中の刹那。「ビーチバレーを愛しているのは私だ!」「私ですっ!」腫れた腕で打ち込んだスパイクと共に、王者と女王の冠が、地に墜ちる。

1-4. 試合内容の補足

1.キングとクイーンが強いのは、クイーンの超速サーブで攻め、なんとか返してもキングのブロックで制されるという王道パターンがあるから。ならばまずサーブを克服すると、先輩と猛特訓。あとは先輩が整える、と豪語。「あなたは受け止めてから、走りなさい。飛びなさい。打ちなさい」
2.キングのブロックは二種類あり、一つはスパイクを封殺するもの――狙うコースを塞ぐもの。もう一つはスパイクを導くもの――狙うコースを決めさせるもの。「正しくビーチバレーの支配者ね」とは先輩の言。「つまりあなたには、キングの予想を裏切ってもらう。打ちにくい方向に、打ちにくいボールを打ち続けなさい」ブロックに適応するためにセットアップは素早く正確に。
3.対策が分かりながらも超速サーブは何度も打ち返せるはずもなく、ブロックを通せるはずもなく、劣勢になる二人。「もっと早く!」「わかってる!」ワンセットきりの試合に情熱を注ぐ。試合はネット際で。常に動き続ける新入生に翻弄され、ついに点差は縮む。
4.デュースなし・1セットのみの試合は20対20。ラストは先輩。執念のサーブがクイーンの姿勢を崩す。しかしキングが上げたトスに、はじめて真剣な表情で食らいつく。それを受け止めた新入生がレシーブ直後に走り出す。それを読み待ち受けるキングを通り過ぎ、新入生が飛ぶ。先輩による背面セットアップ。再びブロックを飛ぶその手の先に、スパイクが抜けていく。

1-5.その他補足

・同級生のストーリーとしては序盤新入生をビーチバレーから遠ざけたり、良くないウワサを流したりした後、それでもビーチバレーに焦がれる彼女を見て、純粋に応援をする……みたいなのです。抜け落ちてしまったので追記。
・言及はないですが女学校だと思います。バレーの実力でカーストが決まりそう。ビーチバレーが盛んということは海辺の学校なんでしょうかね。

1-6. キャスティング

 上記のあらすじを踏まえてキャスティング。メインここのはずなんですがここまで長いですね。ある程度年代が限られた方が学年の上位関係が出そうです。
①新入生:ビーチバレーの名門校に入門してきた超新星
 高坂海美
 砂浜を駆け抜ける姿がありありと浮かぶようです。所々でバレーボールへの情熱、執念に近いものを見せてくれることに期待。
②先輩:新入生を厳しく指導する先輩!
 高山紗代子
 役柄のイメージとしては冷徹でありながら熱血。新入生に厳しいのと同じだけ自分にも厳しい。やればできる、よりはやるのだからできなさい、みたいな。
③キング:ビーチバレー界に君臨し続ける絶対王者
 舞浜歩
 ジャンプした後、あの髪色がコートの中で翻る様を思うと、王者の風格があるだろうと思ってチョイス。ぎらぎらした姿を見せてほしい。
④右腕クイーン:勝利のためなら手段を選ばないキングの右腕!
 徳川まつり
 彼女が言う所の姫とは異なるクイーンだけれど、冷酷な言い回しや視線が似合いそうだな、と。本編でもスポーツ万能であることが語られていましたね。
⑤同級生:新入生と同学年の普通の子!
 所恵美
 彼女のメインストーリーとして、「周りの子は色々持っているけど、私は何も持っていないんじゃないか?」という彼女自身の問いかけがあると思っています。今回はそれを役どころと重ねてしまいました。年代的なチョイスでも正解ですし。

1-7. 謝罪

 主人公と先輩のタッグが『ハイキュー!』の主人公2人そのままでは!? というご指摘があると思いますので予め謝罪します。でも女の子2人によるドンピシャ! 見たくないですか!? いやここで書いても見れる訳じゃないんですけど!!

 

2. 三姉妹カフェ

2-1. はじめに

 3つの演目の中で一番最後に書きました。三姉妹にネコ(※しゃべります)という要素からLTD05でのドラマ(あったか三姉妹、でしたっけ)を彷彿とさせたので、あの手の愉快痛快劇は書けないだろうと敬遠していました。しかし2本書いて1本書かないのも後味悪いなと思って、方向性を違えて公式では読めないシナリオならば、と構想してみたら案外あっさりと出てきました。ここからのあらすじは実際小説を書く時のように(そういえばなんですが、この文章を書いている人は『アイドルマスターミリオンライブ!』の短編や長編小説をそこそこ書いているんですって)、シーンごとに内容を書いています。1シーン1,000文字が目安です。

2-2. あらすじ

1.私たちは、三人で一つだった。平日は夕方から、休みの日は一日じゅうこのカフェでお仕事をしている。お姉ちゃんが経営、私がシェフで、妹はウェイトレス。誰一人欠けてもカフェは成り立たない。大変だけど、やめたいなんて思ったことはない。私にとってこの場所が、私の全てなんだから。
2.でも最近、カフェには変な人が二人いる。一人は三人でカフェを始めた時、初めて来てくれたお客さん。イケメンだってみんなは言うけど私はそうは思わない。かっこいいのは服だけで、どこかぼんやりしてるし、何より、お姉ちゃんへの目線がバレバレ。今日も開店のタイミングでやってきて、お姉ちゃんの気を引こうと三杯目のコーヒーを注文してる。
3.そしてもう一人――もう一匹は、レジの側の籠の中、お姉ちゃんの近くにのしっと座ってるネコだ。茶色の毛がふわふわでかわいいってみんなからは好評だけど、私は触りたくもない。何もしないでぼんやりとしててもいいなんて、なんかむかつくし。それに。「そろそろカレーが出来るね」「うるさい」「何か言った?」「ううん、なんでもない」……またやっちゃった。これは、私にしか聞こえていない。「イケメンさん、帰るみたいだよ。良かったね」ネコが、人の言葉を喋っているのは。
4.夜、最後のお客さんを見送ってからも仕事は終わらない。私はキッチンの掃除、お姉ちゃんは会計の整理。「私が掃除するよ?」「だったら私がレジの仕事する」「明日、試験なんでしょ?」「関係ないよ」私が意固地なのをお姉ちゃんもよく知っているから、それ以上は言わない。
5.妹がネコを抱えてやってくる。「ねぇねぇ、そろそろ名前付けようよ!」「ダメよ。どうせ足が治ったら出ていくんだから」「それはどうかニャー」「チッ」「あ、お風呂の準備しないとね」いつもの位置にネコが鎮座して、二人きりになる。「早く出て行きなさい」「お腹が重たいから、もう少しゆっくりするよー」「タダ飯食らいめ」悪口を気にすることなく、鳴き声がする。出会った日もこんなふうに鳴いていた。
6.雨の日、カフェを開きたいのに妹が一向に帰ってこない。学校に電話しようと思った時、道路から声がする「お姉ちゃーん!」その両手にはぐったりとした様子のネコ。「ケガしてるみたい……」妹の不安げな声をよそに、ネコは心地よさそうに眠っていた。
7.「なんで喋るのよ」「さぁ」「私にだけ聞こえるのは?」「さぁさぁ」「二人に聞こえないのはなんで?」「さぁさぁさぁ」「誰と話してるの?」お姉ちゃんが戻ってきたから、素知らぬ顔して掃除を再開。ネコは眠ったようだ。「……あのね」お店の電気を消した時、お姉ちゃんがぽつりと言う。「話があるの」
8.翌日。試験は、散々な、出来だった。採点してもらわなくても分かる。昨日、お姉ちゃんから言われた言葉が頭を離れないせいだ。「一日だけ、お休みにしてみない?」今までそんなこと、話したこともないのに、なんで、今になって。妹は遊園地に行った友だちの話をよくしていた。だからなのか。私は、お休みなんて、いらないのに。
9.憂鬱な気持ちで家に帰ると、カフェの中に人影が二つ。「俺、真剣です」「……考えさせて下さい」ちゃんと聞かなくても、わかる。嬉しそうなお姉ちゃんの顔。もしかして、デートのために、お休みにするの? 大事なお店なのに? 三人ずっと一緒じゃないの?
10.「お姉ちゃん、入らないの?」「うるさい」「早く支度しないと、開店できな」「うるさいっ!」カバンが落ちて、体が動く。どこに行く? こんな時間に外出たことなんてないのに? お店も開店なのに?「うるさいうるさいうるさい!」正しい私をはねのけながら走る。
11.夢中で走って、逃げて、気付けば、知らない場所にいた。帰り道が分からなくて、そもそも帰りたくなくて、河川敷に座り込んだ。「もうちょっとゆっくり走ってくれない? ボク、やっと治った所なんだから」「……知らない」茶色のネコが、まだちょっとだけ体をふらつかせながら歩いてくる。「早くご飯が食べたいな」「治ったなら出て行きなさいよ」「それはできない。約束したからね」「ちゃんと次女ちゃんを連れて、お家に帰るって」
12.「みんな、お店のことなんてどうでもいいんだって」「そうじゃないよ」「だったら、なんで休みなんて」「お姉ちゃんは、自由な時間を作ってあげたいんだよ」「遊園地でもいいし、ゆっくり過ごすのもいい。ボクみたいにお昼寝するのもね」「私は、そんな時間いらない」「私はただ、お店が――みんなと一緒にいる時間があれば、それだけで」「だったら、早く帰ろう。みんな探してる」くやしいけど、その通りだった。私は、あの場所に帰りたい。こんなに悲しいのに、それでも、みんなに心配をかけていることの方が、よっぽどずっと悲しかった。
13.「ボクの役目はね」ネコの指示で家に帰る。はじめて抱いた茶色の温度はあたたかい。「キミをお家に連れて帰ることだったんだ」「いつかこうやってケンカしちゃった時、ボクについていてほしいって」「……お姉ちゃんが?」「ううん。世界で一番、三姉妹のことを好きな人たちから、お願いされたんだ」記憶と重なる道は、いつか5人で歩いたことがあった。遠くから2人が走ってくる。「……ありがとう」そう伝えてみたけど、いつのまにかあの声は聞こえなくなって、抱いていたはずのあたたかさは、飛び込んできた2人の温度で消えてしまった。
14.「カレーの下準備!」「は、はい今やります!」狭いキッチンだから注意するとよく響いた。今では名物の一つだった。「……私の受験までに間に合うんですか?」手つきはまだまだ不慣れだけど、やっとコック服が似合うようになってきた。「頑張ってくださいね」「はいっ!」お姉ちゃんのおかげで私は容赦なく注意が出せる。「お姉ちゃん、楽しそうだね」「どこがよ」妹のにやけた顔。新しい日々はなんとか回っている。人が増えたおかげで、少しだけ、時間に余裕ができた。勉強も出来るし、妹は遊びにも行ける。そして時々、河川敷に茶色のネコがいないかを探すことも。
15.「ネコさん、帰ってこないかなぁ」「そうね」「大丈夫じゃない?」きっとあっちに報告に行ってるんだ。そのうち帰ってくる。だから今日もカフェを開けておかないとね。レジの隣の籠も綺麗にして、準備完了。「いらっしゃいませ……あら」お姉ちゃんが入り口に駆け寄る。「……おかえり」声はもう聞こえなくても、分かるよ。ただいまって、言ったんだよね。

2-3. キャスティング

①長女:店長(オーナー)。妹たちと一緒に店をやってきた働き者♪
 豊川風花
 あったか三姉妹とは違って、ほんとうにあったかいですよ、風花さん! ともあれ、男性の常連客が出来るほどの魅力があり、かつ長女らしい包容力があるのは、今回のメンバだと彼女が一番かと。
②次女:シェフ兼ウェイトレス。まだ学生で、もうすぐ受験♪
 最上静香
 少し辛口で、でもちゃんと優しくて、真面目な性格が彼女そのものだと思って。
③三女:パティシエ兼ウェイトレス。お店のマスコット的存在♪
 周防桃子
 出番こそ少なめですが、愛らしく可愛らしい姿が間違いなくカワイイですね。ところでマスコット的、という表記がありますが、これネコと被っているような気がしますね……。
④ネコ:いつの間にかお店に居ついたノラネコさん♪(※しゃべります)
 大神環
『ボク』が一人称になると思った時点で決めていました。『聖ミリオン女学園』中でも彼女が『ボク』という一人称を使って演じていたことが影響しています。多かれ少なかれ、やはりこれまで彼女たちがやってきたことは反映されるものですね。実際これを演じるとしたらネコの声役でしょうね。ネコを演じるのは彼女が飼ってるこぶんでしょうか。
⑤お客さん:初めて来たお客さん♪ とってもイケメン! だけど……?
 ジュリア
 ビジュアル面ではピッタリだけれど、ちょっと間の抜けた所を表現するのは彼女にとっては試練かもしれません。

2-4. 補足

・ネコをどう扱うかが悩み所だったのですが、設定には(※しゃべれます)とだけ書いてあり、(※全員が声を聞けます)とは書いてなかったので、先述のようになりました。多分公式がやったら怒られますし、自分が聞き手だったら「その手があったか!」と膝を打ったことでしょう。
・三姉妹カフェ=両親の不在というのは深読み、邪推かもしれません。ともあれ三姉妹であることが強調されるべきだと思ったので、あのような展開になりました。あらすじでは深く書いてないですが、お互いがお互いを思っている描写も不可欠ですね。

 

3. 劇場サスペンス編

3-1. はじめに

 サスペンスとミステリィを履き違えました。終始はらはらとした感情にさせられる作品をサスペンスと呼ぶらしいです。書き手の問題ですが、完全に謎ありきの話になりました。書きながら「これオチ書けるかな……」とはらはらしました。その点ご理解ご了承の上で、以下をどうぞ。

3-2. あらすじ

(名前を呼ぶ場合も役柄名で記載)
1.探偵宅のテレビが壊れる。渋々暇つぶしと修理の駄賃を稼ぐべく、外に出る。
2.寂れた劇場が目に留まる。開演の時刻は17:00だが行列はなく、開演するかも分からない。そんな中、古びた扉が開いて現れるスーツ姿の男。「そこにおいでますは」彼は探偵の経歴を諳んじてみせた。どうやら修理代は何とかなりそうだ。
3.「お前は裸足の女だ。舞台に上がる資格はない」新ヒロインの元に届いた脅迫文(カミソリ刃入り)に、舞台裏は騒然としていた。竦むヒロインに対して、スタァが優しく支える。「私、怖い……」「大丈夫よ、私がついてる」「脅迫文の主を突き止めてほしいのだよ」「開演するのですね」「当然だ!」支配人の姿勢は揺るがない。
4.脅迫文には何の特徴もない。「大したことないのね」と見下す女は背が高い。「脅迫文くらいで騒いで、全く」探偵はその顔を覚えていた。しかしそれはかつての面影でしかなく、元大女優は温度の無い息を吐いた。「あなたの頃にもあったんですか?」「ファンレターよりはね」
5.手がかりを聞き出すべくリハーサルが進む舞台へ。その道すがらで鈍い音と鋭い悲鳴。舞台の上に落ちた照明と、側で震えるヒロインとスタァ。怪我人こそ出なかったが、蒼白のヒロインに、最早公演は絶望的に思えた。
6.「だ、代役を」振り絞る声でヒロインが言う。「稽古してくれたスタァさんなら……」名指しを受けるスタァ、当然これを受けるが、顔には一瞬のためらい(探偵だけがそれを見抜く)。忙しなく動き出す場。開幕の合図が鳴る。「あの」その寸前。「煙草を一本だけ」それは謎解きの合図。
7.「考えていたのは、誰がではなく、どうやってではなく、何故か」「これらの犯行で、どんな損得が起こるか」「それは、私たち全員だろう!」「そうよ! この子もこんなに苦しんで、みんな本当に怖くて」「本当に?」静まる楽屋。「古く、寂れて、見窄らしい、辺鄙な劇場の、スタッフも少ない、ここで公演がないことで、全員が困る?」「見込み違いだったみたいね」冷たく切り込む大女優の視線。「……あぁ、やはり、あなただけが本物だった」「その視線だけが、この場の誰よりもまっすぐで、美しい」
8.「この劇場が愛されていないのは明白だった」「しかし支配人は舞台の幕を上げようとしている、当然、利益が欲しいから」「……経営者が利益を望んで何が悪い」「脅迫文が届いても?」「だから貴様が来たのだろう!?」「探偵、犯人は誰?」「支配人ではありません。公演が出来ないように仕向ける必要なんてありませんから」
9.「あ、貴方が犯人よっ!」大女優を指差してヒステリックに叫ぶスタァ。「私たちのことを妬んでるのよ!だから今もこんなトコまで来て! 帰って!」「彼女は犯人ではありません」「彼女にもまた、公演を始めない理由がありません」「彼女だけが、この劇場を愛しているのですから」機材の調子も、観客の顔も、これまでの歴史も、彼女は全て覚えていた。「そんな彼女が舞台の上で事件を起こすなんて」「……やめなさい」「真意は秘めるものよ」「暴くのが仕事なのでね」
10.「じゃあ犯人は……」ヒロインの目はスタァを見る。「私じゃないわ!」その視線は互いを疑っている。「脅迫文は、ヒロインに届きました」「照明は、スタァの元に落ちました」「まるで、主演の元に巡り来るように」「その役柄を、相手に渡すかのように」「じゃあアナタが犯人じゃない!」詰るスタァ。「照明が落ちて、あなたはこう言うはずだった」『今度は私が狙われたわ。あなた、代わりなさいよ!』
11.互いに証拠が無いと言い張る。「その通りです。これでは誰も納得しない」「では、開演しましょうか。支配人、遅れてしまって申し訳ない」「……さて、舞台に上がるのはどちらなのですか?」その目は前を向かない。動かないその足が、裸足のように見えた。
12.直ったテレビを見ている探偵の元へ大女優がやって来た。そして蕩々と語り出す。大女優が退いてから、劇場の経営が日に日に傾いていたこと。支配人は既に見切りを付けて、劇場を売り出そうとしていたこと。その話を聞いたスタァは、先んじて劇場の看板女優を足掛かりに急いで抜け出そうとして、代役――スケープゴートとしてヒロインが選ばれたこと。そして偶然それを知ったヒロインも、終わる劇場の主演なんて務めたくなかったこと。「貴方なら、どうしましたか?」「私が出る劇場ならば、滅びないわ」「そうですか」立ち去る大女優。テレビが映す映画は、大衆から劇場を奪ったものの一つだろうと思いながら、電源を落とした。

3-3.補足

・言及のあるとおりワイダニット一点張りです。それ故に劇場風景の詳細、ほろびゆく場所の雰囲気を上手いこと書くこと。支配人は露骨に男性っぽく、探偵は少し中性気味に、あとの三人はヒロインは若く、スタァは華々しく、大女優は萎れた風体を描くこと(誰が描くんですかね)。
・探偵の設定『行く先々で事件が~』については、「家を建てない建築家がいないように、依頼を引き受けない探偵もいないのだから、足を運んだ先に事件があるのは当然、私が日々暮らすためには、普通のことだと、考えていますが」といった感じで作中で言及されます。多分。もうちょっと海外の言い回しっぽくかっこよくやりたいです。
・元大女優からヒロインへの視線も忘れないこと。大女優は何が何でも彼女を舞台に立たせようとするが、その態度がかえって脅迫めいて犯人のように映る……はずなので……そう書くようにしてください。
・キレ者の支配人が的外れな推理をするのはアリかもしれません。何がキレていたかというと需要の期限というか、劇場だったり大女優だったりの寿命を察して早々に手を切った、というやつです。
・よりきちんとするならば劇場とテレビの関係性や時代背景(少なくとも2000年代ではなさそう)に触れてみるのが良いのかも知れません

3-4. キャスティング

①新ヒロイン:次回公演の主役に抜擢される。しかし、ある日……。
 北沢志保
 幼げな、初々しさとはつらつさを伴って演技が出来そうなので。大事になるのは喜びと恐怖の対比、そして最後に覗かせる新人とは思えない本性。
②スタァ:劇場一番の人気女優。誰もがそう思っていたが……?
 田中琴葉
 最初は余裕のある優しい先輩で、中では恐怖に怯え、後半はヒロインに本性を剥き出しにする、スタァでありながら大女優と比べると若く幼い姿を演じてほしい。
③元大女優:引退した往年の大女優。新ヒロインに目をかけてい……る?
 篠宮可憐
 あの美貌で枯れた表現をしてほしい。低く落ち着いた声は普段の声色じゃないからこそ栄えそう。ヴィジュアルも演技も期待大。
④支配人:キレ者の支配人。……しかし、キレすぎる刃物は時に……?
 桜守歌織
 凜々しく冷たく、仰々しい言い回しが似合いそう。男性的な演技が出来るだろうか気になりますが、他のアイドルと比べて彼女にはまだ何が出来るという可能性も多くは明示されていないので、期待を込めてのチョイス。
⑤探偵:劇場の常連でもある名探偵。……なぜ彼の行く先々で事件が……?
 百瀬莉緒
 完全に趣味願望希望要望。淡泊な探偵を演じてほしい。イメージは探偵フィリップ・マーロウ。冒頭で引用した『長いお別れ』の主人公ですね。

 

4. おわりに

 書いてきたのはあらすじなので、もう少し詳しく場面の設定や関係性を書いていけばプロットに昇華出来て、つまりは一つの短編小説(20,000字くらい)になると思われます。実際書き始めるとキャストは固定による制約――そのアイドルのビジュアル、普段の言い回しから想起される言い回しなど――が生じてきます。そういった方面で再検討しながらになるので、執筆は一筋縄ではいかないでしょう。余談ですがきちんと書く予定はありません。いまのところは。
 キャスティングについては現在のランキングと比較すると、ビーチバレーがなかなかの当選率でしたが、あとはほとんど合致しませんでした。個人的なストーリーやキャスティングのイメージと、実情のずれを実感している所です。CDが発売された折に読み返して、恥ずかしさの余り泣くことにならないといいなぁと他人事のように思いつつ。
 一日一本、三日で三本、さんぼわさんぼ、和三盆♪ といった具合に書けたので、三日後には色々な方のオリジナルあらすじが読めるだろう! と期待いっぱいの中でエンディングです。
 ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

 

長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))

長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))