ホントの話と、未来の希望

だからつまり、うちは光ってない状態でもええなーって思ったわけよ。

――『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』より

  『真昼のイルミネーション』

  光っていましたよ。どうもサイトロです。

 四時に目が覚めたので、読みました。
 『響け! ユーフォニアム』シリーズ自体は映画『リズと青い鳥』を見てからアニメを経て、『誓いのフィナーレ』に至っておりました。それ故に、誓いの結末に思う所があり、ずっとそれを抱えていた所した。
 今回は小説『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話 』を通して朝方に得た感傷と、とある形で続く、彼女たちの物語について書き記します。
 劇伴は当然、Homecomingsで。『Cakes』も好きです。


Homecomings - Songbirds(Official Music Video)

 

 

1. あの日終わったコンクール

『誓いのフィナーレ』にて、全国大会を目指していた北宇治高校はあっけない――あまりにもあっけない結末を迎えた。愕然とした。こんなのってないじゃないかと思った。
 贔屓目だとは分かっている。『リズと青い鳥』で少女たちが見据えた道が、こんなにもあっさり終わってたまるかというのは、不躾なことだと分かっている。主人公たちのために三年目の、最後の全国大会の意味合いをより強めることだと、十分分かっている。そういえばだけど、三部作であるところの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』もpartⅡはpartⅢのためにあるような結末だった。あれで一年待たされるのはしんどかっただろうなぁ。閑話休題
 そう思っても結末は変わらないわけで、結末がもどかしかったとTwitterに書いた後、一度友人と飲み会で話したことがあった。曰く、それは作中における『セントラル・クエスチョン』(主人公の解決しなければならない問題)が解決していないからではないか、と。これはこれで一つの記事になりそうなのだけれど、敢えて今回はこれ以上は書かない。少なくとも、久美子に示された問題は解決――というか、すべては三年目に持ち越しとなったと思っている。
 そして今日に至る。Twitterにて勧められ、いずれ読もうとは思い購入こそしていたけれど、まさかこんなに早く読み終わるとは思わなかった。
 少しだけ、期待していた。あの日終わってしまった道を見て、彼女たちがどう思っているのか。劇場では明示されなかったことが明らかになるのではないか、と。しかし、そうはならなかった。今書きながら思ったけれど、それを知りたければ本編第二章にしか書いてないだろうに。

 

2. 真昼の光に隠れる、イルミネーション

 そろそろ本題を書く。エピグラフにも書いた、『真昼のイルミネーション』の話がしたかった。
 夏紀先輩はユーフォニアムから離れようとする。ひたすらに全国を目指し、挑んだ日々はかけがえのないもので、こここそがピークであると信じている。対して希美は、音楽はもっと気楽にやって良いと言う。
 私は改めて思い知らされる。既に二度目の挑戦は終わり、途絶えた道のほうを、彼女たちは見ていないことを。大学生活に思いを馳せながら、ギターを始めることを空想する夏紀先輩は、一つの希望に見えた。
『響け! ユーフォニアム』は徹頭徹尾コンクールでの優勝を目指す物語だ。本短編で描かれる部活のシーンは、すべてがコンクールのための糧としての役割を持っている。
 その物語の隙間に、音楽との付き合い方の折衷案が出てくれるのは、優しいシーンであり、久美子たちには出来ないと思った。

だからつまり、うちは光ってない状態でもええなーって思ったわけよ。

――『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』より

  『真昼のイルミネーション』 

  弱い光だったと思う。
 事実だけを書いてしまえば、夏紀先輩たちの代では、全国大会には辿り着かなかった。夏紀先輩は度々実力の不足が描かれ、『誓いのフィナーレ』では問題の発端となった。
 だけど諦めなかった。
 最後まで吹いていた。
 高潔さというよりは、地に足を付けた優しさと誠実さが備わっているのだと思う。それはこの短編で語られる以下の件からも分かる。

自分ももしかしたらそういう大人になるんかもしれへんっていう可能性なんかもしれんわ。誰かの好きを踏みにじってても気づかへんような大人にさ。

――『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』より

  『真昼のイルミネーション』 

 正しい自分ではなく、間違うかもしれない自分を想像することが、出来るだろうか。
 真昼の光に潜む、イルミネーションのような警告。

 

3. 未来の希望

 最後に未来の希望について書く。これはまだ、最終楽章を買っただけの私が話すことなので、それを了承していただきたい。
 未来を描いている人がいる。それは、中川夏紀がギターを弾いている未来だ。

 所謂二次創作ではあるけれど、可能性としての未来がここにある。生活と苦悩、その中に音楽があることを物語としてしたためている。丁寧な物語は、彼女たちが第二楽章を経ても尚、短いながらも同じ時を過ごしていることを描いている。
 幸いなことだと思う。
 この物語もいつしか終わってしまうのだろうけれど、それでも、思う。
 夏紀先輩が誰かの希望に――いつかよりも明るさを増した光であってくれたら、と。

 

 

 何やら仰々しく書いてしまったけれど、私は『響け! ユーフォニアム』シリーズも、かの二次創作のシリーズも、引き続き追いかけていきたいと、そんなことが言いたかったのだと思う。あとは警告。忘れてはならない警告。
 警告――については、同日に読んだ本にも関わりがあり、実は今日は、それについての記事を書く予定だったのだけれど、先延ばしになってしまった。もっとサクサクと書き上げるつもりが、思ったよりも長く掛かってしまった。
 ともあれ次回がありましたらその時に。
 余談ですが、さきほど『リズと青い鳥』のブルーレイを買いました。
 もう一度、彼女たちの物語を振り返るために。あの日劇場で見た興奮――スクリーンに光が絶えた瞬間の、二度とは味わえないであろう感覚を、忘れるために。


 いつかは何もかもが思い出になるのでしょう。

 

 

By making it a song,

Can I keep the memory?

I just came to love it now.

(歌にしておけば、忘れられないでいられるだろうか。

 たった今好きになったことを。)

――Homecomings『Songbirds』