20160731-0801_関西遠征録

「どこにいるのかは問題ではありません。会いたいか、会いたくないか、それが距離を決めるのよ」
――森博嗣すべてがFになる真賀田四季

 会いたいと思ったので会いに行きました。
 どうもサイトロです。今回はきわめて個人的な話です。毎度のことでは? 

 7月31~8月1日の二日間、関西の方で遊んできました。その道すがらで考えたこと、話したことについて、書き残しておこうと思います。全てを頭の中に収めておけるほど起用では無いのです。そのためか、普段は滅多に写真を撮らない質なのですが、幾つかこの記事のためにと撮影しておきました。百聞は一見にしかず、というやつですね。

 ではラインナップ。

1. 京都、金閣寺龍安寺

2. ビール、そして伏見稲荷

3. 兵庫の北沢志保と水族館へ

4. ビールクズ、二人。

5. そして遠征は終わる。

6. 移動中の楽曲群について

7. 空港でのつぶやきまとめ

 

 

1. 京都、金閣寺龍安寺

 仮面ライダーが始まる辺りに地元を離れて、伊丹空港へと飛びました。伊丹の丹ってなんかかわいいですよね。伊丹から駅前のバスを使って新大阪まで移動。翌々考えると、駅を目印にバスで移動って中々皮肉が効いてると思うのは、滅多にそういうことをしない田舎民の発想でしょうか。新大阪から京都に移動する際、電車の『快速』と『普通』の違いが分からず、結果待ち合わせ時間に遅れる羽目になりました。このとき、都会で生きていくことを諦めました。
 ともあれ待ち合わせにはギリギリ間に合って、K氏と合流。ミリオン3rdTシャツが眩しかったです。駅内でラーメンを食べつつ、二次創作関係の話に一時間以上花を咲かせました。そういえば美味しかったラーメンのスープをあまり飲まなかったような。
 京都からのんびりと移動して金閣へ。

 金閣内は海外の観光客が多く、逆に日本人がマイノリティなのでは、と思ってしまうほどでした。この辺から雲行きが怪しく、怖いですねぇイヤですねぇと言いつつ周辺を見回していました。

 そして龍安寺に着くと、雨のカーテンがかかるかのように、大雨が降り出しました。K氏と軒先に座りつつ、真面目な話をしました。二次創作を真っ当に誠実にやりましょう的なことをぶつぶつ言っていたような。
 金閣を見た時から、『人間の手がまだ触れない』という単語が頭の中にありました。私のような観光客が金閣の中に入ること、ましてや触れることなんて、絶対にありません。柵や池に阻まれてもいます。
 龍安寺の庭園も同じように、決して触れることは出来ません。ですが写真の通り、体を動かしてしまえば中に入ることも出来ます。私を含め誰もがそうしないのは当然のマナーだと思いつつも、誰もが雨のカーテン越しに庭を眺める光景は不思議なものでした。『人間の手がまだ触れない』。しかしきっと、金閣龍安寺の景観を保つために、触れる人/直す人は居るんでしょう。きっと、多分。そう思うと、この言葉の語尾には疑問符が似合うように思います。
 触れられないものに触れられる人。なりたいようで、あんまりなりたくはないですが。

人間の手がまだ触れない (ハヤカワ文庫SF)

人間の手がまだ触れない (ハヤカワ文庫SF)

 

2. ビール、そして伏見稲荷

 龍安寺からK氏と二人、京都駅へと移動しました。十八時からビールを飲む約束があったのです。その道すがらゲリラ豪雨に遭遇した件については、呪詛しか出てこないので割愛。私の愛が恨みを救う。
 京都駅近くでY氏とA氏(ルールに則ればY氏なのですが、被ってしまうのでお名前の方を使用しました)と合流。ビールで乾杯しながら楽しい話をいくつかしました。Y氏とA氏のやりとりに笑いっぱなしでした。この時の話によって、秋辺りの同人活動の指針が定まりました。とても感謝しております。写真は撮ってなかったですね。ずぶ濡れの荷物から携帯を取り出すことが億劫だったのだと思います。
 アルコールを摂取した四人で一路伏見稲荷へ。一度電車を間違えるも時間に余裕があったのでのんびりと方向転換。

 

 夜の伏見稲荷は雰囲気が良い、とても静か、人が少ない、といいこと尽くしです。足元が不安になる位には明かりが少ないので、一人で行くのはオススメしませんが。

 この写真を見てGRAPEVINEの『アナザーワールド』を想起した方はご一報下さい。ご飯を奢ります。

 このとき感じたことについて小説にしたいと現地で法螺を吹いたので、この場を借りて実現します。pixivに上げるには少々私的で詩的な内容で、文字数もきわめて少ないからですね。

title:悲しい顔で君は立っていた

 切り取られたような夜に、少女は立っていた。木々の奥から虫の鳴く音がするばかりで、それ以外には何もない――まるで少女以外の全てが死に絶えたようであった。弱々しく握った手が、言葉にならない気持ちを語っていた。誰にも伝わることのない、静かで、けれど確かな恐怖を。
 道は二色だった。影と明かりが順に並んでいる。横断歩道のようだと笑っていたのは、まだ少女が一人でなかった時のことだ。その時までは、たしかに右手は握っていたのだ。灰色のスーツから、安心を得ていたのだ。それなのに、どうして。問いかけは闇に溶けるばかり。
 影を象っているのは、並び立つ鳥居だった。手を伸ばしても届かない高さの、厳然とした存在。重なり続ける境界。遠くまで鳥居は続いていた。果てしなく、終わりなく。まるで、始まりと終わりが結ばれた、輪のような道。誘われるは、ここではない何処か――――
 そんな道の中心で、少女は立っていた。ゆっくりと足を踏み出しては、些細な音に肩を震わせた。それでも、少女は影と明かりを交互に踏んだ。境目を何度も乗り越えた。右手の感触を、もう一度掴むために。
「百合子さんっ」
 温かな声だった。夏の夜でも熱を持った空気が漂っていたが、その声の温もりは、確かに少女の恐怖を和らげた。
「プロデューサーさん!」
 名前を呼んで、振り向いた。その先には、幾らか姿が闇に溶けていながらも、白い肌の男が立っていた。表情は焦りから安堵へと、ゆるやかに切り替わる。
「わ、わたしっ……こわくて」
「すみません……」
 それ以上の言葉を、少女は――百合子は飲み込んだ。差し出された白い手に応じた。手と手の隙間に、今までの気持ちを押し込めた。
 それからは、幾つも並び立つ鳥居を潜った。道は未知だが道でしかなく、それ故に、交わす言葉もなかった。純然と夜はそこにあるだけで、決して百合子を切り取りはしなかった。静かなる時に、虫の音だけが無関心だった。
 やがて二人は、開けた場所に辿り着いた。先には鳥居があり、背後もまた変わらず。しかし、来た道の隣に、同じような道が並んでいる。
「ここから先は……」
 言葉の先を、少女は首を振って止めた。
「では、帰りましょうか」
 男が導き、百合子は導かれる。鳥居を潜りだした頃、百合子は、手の隙間に隠した気持ちが、こぼれ落ちたことに気づいた。安心だろうと思った時、ふと、左手が鳥居に触れていた。
「……百合子さん?」
 その指は、文字をなぞっていた。
「これ……」
「確か、お金を払うと奉納できるそうですよ」
「じゃあ、765プロも奉納出来るんですね」
「まぁ、出来ないことはないですが……」
 ゆっくりと会話は始まった。二人きりの道に、阻むものは何も無かった。彼女が笑みを返す頃には、手の中にあったもの――一人の時に感じた、失われたそれについて、思いを馳せることはなかった。
 彼女にとって、それはもう、ここではない何処かへと誘う境界ではなかった。

 タイトルはthe pillowsの『天使みたいにキミは立ってた』のもじりです。もじってるだけです。
 伏見稲荷観光も終わり、最初にK氏と、次いでY氏と、そして同じ電車に乗ったA氏と、順々に別れていきました。最後の辺りは割合泣きそうでした。毎回、人と別れるのが辛いのです。
 それからは地下鉄と電車の違いに心が折れそうになりながら、何とか宿に辿り着きました。翌日起きれるか、そもそも眠れるかを心配しつつ、一日目は終わりです。

 3. 兵庫の北沢志保と水族館へ

 翌日は六時頃には目が覚めて、だらだらと準備をしてホテルを出発。広めで綺麗でいい場所でした。そういえばなんですが、ホテルで着るローブが寝る時に合わないことが辛すぎたので、これからの旅行は寝間着も持参することにします。
 神戸駅アンパンマンのマーチを聴きながら待っていると、現れたのは白黒ボーターのシャツを着たS氏。北沢志保Pだということも相まって(というかご本人がそれを想定したのでは?)、実質北沢志保だと思っていました。内心で。
 今回の旅行は『伏見稲荷に行くこと』が第一目標で、次いで『S氏にお会いすること』が第二目標でした。Twitter上でお会いしたいと常常言っていて、会いたいと思ったので距離を詰めてみた次第です。
 男二人で水族館へと向かいました。周りには子どもに子ども、子連れの大人に子どもと、ひたすらアウェーでした。

 さてここで再び小説を。

title:イルカを知らない少女たち

 少女たちがプールを見下ろすと、幾つかの黒い影が外周に沿ってゆったりと円を描き出した。時折背びれがゆらめく水面から姿を覗かせては太陽の暑さに水中へと潜っていった。
「暑いわね」
 そう話す少女は、紺色のハンチング帽を目深に被った。つばで隠れなかった視界で、水面を見続けていた。
「そうだね」
 そう返す少女は、麦わら帽子を少しだけ外していた。そよ風が髪の隙間を通り抜けていく。
 会話はそれだけだった。互いに言葉を手繰ることなく、一つ分離れた席のように、ぽっかりと空いた沈黙は喧騒が埋めていく。少女たちが喋らずとも、周りからは声が沸き上がっていた。それは嘗て少女たちが通り過ぎた過去であり、振り替えれない記憶であり、しかし、一度たりとも経験してこなかった事実であった。
 それぞれが、それを知っていた。分かっていた。しかし、分かち合うことはなかった。それ故に、一つ分の席が空いていた。まるで、そこに、誰かが居ることを望むかのように。
 やがて、水面の影は奥の方で留まり、動かなくなった。水面は変わらずにゆらめいていた。太陽の光が反射して、少女たちの目に飛び込む。快活なアナウンスが、ショーの幕開けについて話し始めた。喧騒が一層騒がしくなる。
「……桃子」
「……志保さん」
 アナウンスが始まった途端のことだった。喧騒の隙間で気を紛らわすことを、互いが同じタイミングで選んだのだ。
「イルカ、初めて?」
「うん。志保さんも?」
「初めてよ。水族館も」
「桃子と一緒だね」
「そう……そんな気がした」
「……桃子も」
 ハンチング帽を少し上げた。
 麦わら帽子から相手を見た。
「桃子たち、似てるんだね」
「そうね」
 先に笑ったのはどちらだったか。淡い笑みは開幕の合図に溶けて、視線はプールの方を見た。
 ゆらめく水面を背びれが裂いていく。そして、影が水中を離れて、空の中で三日月の像を結んだ。
 帽子の中でどんな顔をしているか。それは、隣の相手も見ていない、本人さえ知らないことだった。

 

 イルカを初めて見たのは何時のことだったでしょうか。

 4. ビールクズ、二人。

 お酒の席では真面目な話も少々しました。二次創作をやること、拙作『輝く瞬間』について、アイドルの幸せについて…………特に、最近のゲッサンについて語っている時は概ね泣いていました。
 少しだけ内容を書くと、アイドルたちが時にぶつかる苦境(書き手が描く苦境)について、そういうことを乗り越えて強くなることが、必ずしも正しいとは思いたくないんですよね。庇護しているだけ、だとも思うんですが、では、成長には痛みが付きものだなんて真理を突きつけても良いのか? それは本当に正しいのか? と思うのです。何時か何かを選ぶにしろ、この疑問は、ずっと胸に抱いています。

 5. そして遠征は終わる。

 ビールクズが時間ギリギリにトイレに行きたいとつぶやきながらバス停を探す様はさぞ滑稽だったでしょう。
 そんな中、S氏と最後に約束を交わしたのでした。

 2017年3月、ミリオンライブ4th公演。会場は、日本武道館
 チケットと休暇、頼む。その辺便宜を図れ。
 そんなことを思いつつ、一人帰路に着いたのでした。

 割と帰るの大変でしたが、ギリギリ予定通りに帰り着きました。

 これは秋頃に出す同人誌について内容を固めた、という意図の文章です。酔っ払っていると正確な言及を避ける傾向にあります。

 関西遠征録は概ね以上です。ここに書かなかったことは思いの中で忘れたり、小説として出力してくれればそれでいいです。
 今回お会いした方々と、最後には必ず「またお会いしましょう」と言葉を交わしました。法螺吹きにならないよう、同人活動を邁進していく所存です。皆様、本当にありがとうございました。

どんなに悲しくても
生き延びて又会おう
悪夢を蹴散らす歌を唄いながら
――the pillows「No Surrender」

 6. 移動中の楽曲群について

 今回の旅行、やたらと移動中に音楽を聴いていたので、それをまとめてみました。

 

 窓の外が五月蠅くてまともに聴けてなかったです。

 正しくは『愚かな者の語ること』。

 最後のこれなんですが、GRAPEVINEのライブを一人で再現しているやつですね。酔っ払うと人間性が屑塵と化す人間の実例です。

 7. 空港でのつぶやきまとめ

 空港で飛行機を待つ間、幾つか面白い(当社評)つぶやきをしたので、それを記憶に留めておく用。

 この辺のことを小説として出力する機会が来て欲しいなぁと思うばかりです。

 

 半分はつぶやきをまとめただけの内容をブログと呼ぶかについては読者にお任せします。長くなりましたがこちらからは以上です