『ミリオンライブ! 誕生日小説』シリーズを終えての雑感

どうか急いで
どうか終わらないで
思い出になってどうなるの
――GRAPEVINESPF

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 今回の記事は一つの思い出のようなものです。どうもサイトロです。
 以下私事なことをつらつらと書くだけです。

 

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  2016年9月26日は、『アイドルマスターミリオンライブ!』のキャラクタ、ジュリアの誕生日です。そして、51作目の短編シリーズを投稿する日でもありました。

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 昨年の10月5日、田中琴葉の誕生日から、から、『アイドルマスターミリオンライブ!』のキャラクタ全員(厳密に言えば、アイドル全員)に、小説を書くというシリーズを始めました。そのキャラクタの誕生日、零時零分に投稿するということを50回繰り返してきました*1
 一年、かかりました。たかが一年されど一年。ともあれ一年。
 今回は少し過去を思い返しつつ、このシリーズは何だったのか、何かを残せたのかということを、考えてみようかと思います。

 

まず、辛かった。

 いきなりこういった文言から始めるのはどうかと思いますが、事実は事実です。
  50人アイドルが居るということは12ヶ月で最低四件は〆切が存在します。一週間に一本のペースで書いても中々厳しかったのですが、時々誕生日が近しい場合があります。一番厳しかったのは8月27日、29日、9月2日と続いた日です。
 とにかく書いても書いても〆切があります。それに慣れることはただの一度なく、常に話のネタを考えては公式の台詞を読んで、アイドルを把握することで必死でした。
 誕生日小説で初めて向き合うアイドルばかりで、基本的には慣れない中での執筆ばかりでした。キャラクタとかけ離れていないか、そのアイドルらしいネタを引き出せたか。そう思いながらも、自らの答えを短編として出力するしかない一年でした。
 Twitterでも頻繁に愚痴をつぶやいてしまい、そのせいで読者が離れるんじゃないかという懸念もありました。しかし思い悩むことを思い悩むといよいよ目が回り、何にも手がつかなくなることを思うと、どうしても時折(特に飲酒をした時)吐き出さないと最後まで続けることは出来ませんでした。
 自分で始めたことなのに辛くなるというのは滑稽だと、嘲るのにも慣れてしまいました。

評価について 

 そんな誕生日小説シリーズですが(そもそもシリーズとして認知されているかはさておいて)、評価(pixiv内での評点、Twitterでの宣伝など)は作品を出す毎にゆっくりと上がっていったように思います。データの収集条件が細かに違ってしまったため、この場で出すことはできませんが、閲覧数で言えば150~250、TwitterのRT数は平均10くらいでした。これの大小については比較対象が無いので何とも言えない状況です。まぁ無いよりは有った方が断然嬉しいです。
 一年前と今とでは、環境も大きく変わりました。同じく『ミリオンライブ!』の二次創作を投稿する人と話をする機会も増えました。即売会では『輝く瞬間』を出版し、それなりにご好評を頂くこともできました。誕生日小説を投稿する人物、としての認知も幾らかあると思っております。それの程度については問うことは出来ないのですが、少なくともゼロではないかと。
 総じて、評価としては上々なものを得たと思っております。妥当かどうかは分かりませんが。

そもそも、何故始めたか

 事の発端は、『琴葉の指輪』を書く前のことでした。
 Twitterでやいのやいのと言い合う仲の友人とやいのやいの言っていた時、ふとこう言われたのです。
 我那覇響の誕生日小説も書きませんか、と*2
『琴葉の指輪』を投稿した後にもそのことを覚えていて、且つちょうど書きたいネタも思いついたので、『響のギター』という短編を仕上げてみました。
 その時、「琴葉、響と続けてみたのだから、いっそ全員書いてみたらいいのでは?」と思いついたのがきっかけでした。結果一年間悶々と悩み通すとは知らずに。そのことをこうして書き連ねるとは思わずに。
 

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書かないと分からなかった

 一人のアイドルと向き合って、そのアイドルの作品を書くということ。それを50回繰り返すのがどれだけ大変であるかなんて、実際に体験しないと分からないことなのです。言葉では週一の〆切と、5000文字書ければいいとは言うものの、その裏でどんな時間を過ごしてきたのかは、結局の所自分だけのものです。こうして書いているものの、その実過ごしてきた時間、最初の一文が書けないといらついたことや、評価が付かないと頭を悩ませながら眠った夜のことは、自分の中にしかありません。学生として半年、社会人となって半年、常に頭の隅には誕生日小説のことがありました。飲み会で「〆切が直近で無いから参加しているんだ。有り難く思え」と内心で毒づきながらお酒を注いだこともありました。それはそれとして飲み会は普通に面倒です。
 では、その苦悩を経て得たのは何だったのか。

 

きっと、二度と書かないアイドルがいる

 一つ上げるなら、こんな言葉になります。
 一ヶ月に5000文字程度の作品を四つ書けます。
 同じ時間をかければ、20000文字の作品を一つ書けます。
 そして、自分が目指すのは後者の方だと、終わり際になって気づきました。このアイドルと向き合って、もっと文字数を積み重ねたものを作品として出力したい。そのためには、誰に時間を使って、誰に時間を使わないかを選択しなければならない。
 50人居るならば50人それぞれの話を書いてみたい。
 そもそも、そう思う人自体が少ないんだと気づいたのは何時のことだったか。
 誰しもが無意識に、或いは意識的に、或いは最初から選んでいたのです。
 このアイドルと向き合うということ。そして、向き合えないということ。

「決めろ。「しかたがない」ことなど、なにひとつない。選べばいい。選びとればいい。だれもがそうしているんだ。ひとりの例外もなく、いつも、ただ自分ひとりで、決めている。分岐を選んでいる。他の可能性を切り捨てる。泣きべそをかきながらな」
――飛浩隆『グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ』

 シリーズの終わりに、この言葉と出会いました。
 明日からは、50人全員を選ばないという選択をします。恐らく、二度と書くことのないアイドルもいます。そんな当たり前のことを、こうして重大なことのように書いてしまうのは、自分の悪い癖です。
 自分が書かなくても、誰かが書く。それが二次創作のいい所です。
 けれども本質は、自分がそのアイドルと向き合うか、向き合わないかを選ぶということなのです。一年をかけて初めて、その決断をする所にまで来れました。来てしまった、とも言えます。

どうか急いで
どうか終わらないで
思い出になってどうなるの
これが本当なら
それはわかっているさ
目が覚めれば痛いのも
――GRAPEVINESPF

 これは、誰かを思い出にするという話。

 

それでも、書き続ける

 来年の2月、ミリフェス5までのスケジュールが確定しています。
 寄稿1本、コピー本1冊、同人誌1冊。
 同人誌の内容は三つほど候補があり、11月のISF02が終わった後に決断します。
 この原稿以上のことは出来ないという見込みです。pixivには月1本は何かを出せればいいと思ってはいますが、今の所計画は白紙です。
 誰かを書くということは、誰かを書かないということ。
 そんなことを思い、ひとりでに痛みながらも、書いていきます。
 たかだか二次創作の話です。自分が辞めても数多と作品はあって、常に取捨選択されています。「おもしろい」の一言にすくい上げられ、「つまらない」の一言でこぼれ落ちます。
 それでも、書きます。
 自分が読みたいと思った話を書いてくれるのは、今の所自分しかいないので。誰かいたら辞めるかは分かりませんが。
 

終わりに

 誕生日小説を書いてきました。
 50人のアイドル(と、1人の事務員)のために、物語を51編書きました*3
 作者がどう思うであれ、残るのはこの短編たちだけです。インターネット上にアップロードされている限り、誰かの目に留まる可能性を秘めています。それは『ミリオンライブ!』がアニメになった時かもしれませんし、大きな新展開があった時かもしれません。50人のアイドルの小説を探した時に、その全てに『サイトロ』の名前があることを嬉しく思います。
『ミリオンライブ!』の二次創作作品が好きです。オススメは幾つもあります。即売会の興奮を忘れることが出来ずに、今年の11月も来年の2月も東京に行きます。過言ですが、人生を変えたコンテンツだと思っています。この一、二年が、今までで一番苦悩して、そして充実しています。
 書いてよかった。
 書けてよかった。
 書き切れて、本当によかった。
 そう言って済ませればいいことを、長々と引き延ばしてきました。
 明日からは11月の本に向けて苦悩しなければなりません。そのためにも、そろそろこの場を締めようと思います。
 誕生日小説を読んでくれた方へ。
 ありがとうございました。
 様々な評価や宣伝が、私の糧でした。
 機会がありましたら、また拙作を読んで頂けると嬉しいです。
 それでは、自分自身への一言を以て、誕生日小説は終わりとさせて頂きます。それを伝えるための短編を、と思ったりもしたのですが、次の作品がそれを許してはくれませんでした。まぁ何でも書けばいいものではないです。

 おつかれさまでした。

 こちらからは以上です

 

 

*1:短編は51作なのに50回なのは、二階堂千鶴の誕生日のみ一時間投稿が遅れたからです。

*2:実際にはすこぶる軽い言葉だったのですが編集を加えました。

*3:2つ書いたのは最上静香のみ。改めて、自分はこのアイドルが好きなんだと思いました。